新・午前十時の映画祭第1回初日、かつ5回目のフリーパスで2本ハシゴ=合計約8時間≒出勤。[新・午前十時の映画祭(1)]

 昨年いっぱいで終了、と打たれた午前十時の映画祭。しかしその背景には、デジタル上映システムの急速な普及がありました。

 フィルムの味わいを愛好するひとは今でも少なからずありますが、新作が一気にデジタルに移行している昨今、どこでも対応を迫られている。無論、今でもフィルム上映が可能な小屋はありますが、縮小傾向にあるのも間違いなく、その最後の機会を見据えた企画でもあったこの映画祭も、一段落したわけです。

 ――が、それは翻って、旧作であってもデジタル化が実践されれば、対応が出来た映画館で名画座に準じる企画を、1年間通して催すことが出来る。現に、すべての作品ではありませんが、デジタル化は着々と行われており、そうして今年、全作品デジタル化による、新たな“午前十時の映画祭”が実現した、というわけです。旧シリーズと被る作品が11本あり、総数も25本とだいぶ減りましたが、しかしその代わりに2週間という余裕を持った上映が可能になった。

 昨年は、色々と身辺でバタバタ続きだったため、すべて再鑑賞になってしまう第3回にはけっきょく1回も立ち寄れませんでした。しかし今年は、デジタル化しての第1回、当然ながら同じスタイルで継続するかは動員にかかっているはずなので、やはり再び殿堂入りを狙うくらいの気持ちで足を運びたい。金・土は新作封切りに宛てるのが習慣ですが、記念すべき第1回ぐらいは、と思い、だいぶ前から初日に馳せ参じることを決めておりました。

 そうしてスケジュールを練っているとき、ふ、と気づいたことがある。絶対に観る、と心に誓っていたのに、なかなか足を運べずにいた作品の上映スケジュールが、微妙なことになっていた。かかっているのは新・午前十時の映画祭と同じTOHOシネマズ六本木ヒルズですが、コマは1日わずか2回、最初が14時50分で、次が20時55分。普段、13時から15時くらいのあいだから1〜2時間ほど仮眠を取って、宵っ張り故の寝不足をなるべく解消する習慣になっている私には、14時の回はきつい。かといって、尺が3時間近い映画を21時頃に六本木で観はじめると、帰宅するのが深夜1時になってしまう。この奇妙なスケジュールは、どう考えても近々終了になる気配が濃厚なので、どちらかで押さえねばいけないらしい。だったら、たまには昼寝を犠牲にするつもりで、昼間観ておいたほうがましではなかろうか。それならば本日、映画祭のついでに観に行けまいか――と考え、スケジュールを調べると、ひと組だけ、実にがっちりとあいだを埋められる作品があった。幸いにも、そちらも気になっていたけれどなかなか観られなかった映画。このハシゴを実践すると3本立て、しかも朝10時から夕方18時頃まで映画館に居座る、という、ほとんど出勤しているような状態になってしまいますが、まあ、1回ぐらい試してみてもいいか、と思い、意を決して実践してきました。

 と、気分は高揚しておりますが、天気予報は芳しくない、というか早い段階から春の嵐を予告している。朝のうちは多少明るくとも、昼頃には降り始め、夕方まで映画館に居座っていると、帰る時間帯にピークを迎えそうな雲行き。ここは大人しく、電車で移動することにしました。六本木ヒルズで暴風に遭うと、折り畳み傘は確実に駄目になるので、まだ降っていない行きには荷物になるのを承知で普通の傘を持参。

 だいぶ前置きが長引きましたが、到着しましたTOHOシネマズ六本木ヒルズにて鑑賞した1本目は、新・午前十時の映画祭、六本木での記念すべき第1回作品。稀代の美形俳優アラン・ドロン主演、金銭的に追い込まれた男女3人が、一攫千金を夢見て向かった冒険の思いがけない顛末を描いた冒険者たち』(大映洋画部初公開時配給)

 ほとんど予備知識なしで鑑賞しましたが、さすがにこのシリーズのチョイスは信頼できる。オーソドックスなようでいて意外性のある、爽やかで苦い青春ドラマでした。青春、と呼べるほど登場人物の設定年齢は若くなさそうなんですが、それでもそうとしか呼びようのない空気の醸しだす心地好さ、思いもかけない顛末の苦々しさが沁みます。デジタルだと少々クリアすぎる気もするんですが、しかしフィルムの味わいもまるっきり損なっているわけではないので、これはこれで良し。

 鑑賞後、ちょっとだけ空き時間があるのを利用して、近くのファストフードに向かって昼食を購入、次の作品の予告篇が流れているあいだに取り急ぎ栄養補給を済ませました――ポテトを大量にこぼす、という悲劇が起きてしまいましたけど。落ちている時間は長くなかったし床はちゃんと拭いているはずだしまだ雨も降ってないし、と己に言い聞かせて、あらかた回収して食いましたけど! ちょっとだけ明日の腹具合が心配ですけど!!

 ……という嘆きはさておき、次のお目当てとの繋ぎ、みたいな位置づけで鑑賞した本日2本目は、『X−MEN』シリーズのブライアン・シンガー監督が、あの有名な童話をモチーフに描いたアクション・ファンタジージャックと天空の巨人(3D・字幕)』(Warner Bros.配給)。いや、優先順位は低かったですが、これも当初から観たい映画のリストには入れてあったんですよ?

 とはいえ、実のところブライアン・シンガー監督にはあんまりファンタジーを撮るセンスはないんじゃないかなー、と思っていたので、さほど期待はしていなかったんですが……思いのほか、面白かった。すごくきちんと伏線が張り巡らせてあるし、終盤幾度も変化していく状況が、冒険もののドキドキをきちんと表現している。ファンタジーだから、という侮りが生み出す不自然さも少ないですし、ユーモアもふんだんに鏤められているので、上出来だと思います。

 と、作品自体は楽しかったんですが、悩ましかったのは後方の席から頻繁に声が聞こえたこと。どうも英語圏の子供がことあるごとに、というよりほぼ絶え間なく歓声を上げていたのです。映画に熱中しているが故でしょうが、もうちょっと抑えろ。近くにいたらじかに注意していたレベル。

 映画には満足しつつも、ポテト散乱と子供の声で若干沈んでましたが、気を取り直していよいよ3本目へ。本当に、もっと早く観るつもりが、ひたすらタイミングを外し続けて1ヶ月以上、ようやく鑑賞出来ました。クエンティン・タランティーノ監督最新作、ジェイミー・フォックスクリストフ・ヴァルツレオナルド・ディカプリオほか豪華キャストを結集し、もと奴隷の復讐を描いた西部劇ならぬ南部劇ジャンゴ 繋がれざる者』(Sony Pictures Entertainment配給)

 ……滅法、面白かった。これまでに観たタランティーノ作品でもいちばん好き、と断言します。西部劇のフォーマットを崩すことなく、そこに“黒人奴隷”という要素を見事に組み込み、独創性を生み出している。相変わらず暴力描写に容赦ありませんが、ユーモアも抜群なので、重苦しい気分にならず引っ張られる。クリストフ・ヴァルツの魅力にジェイミー・フォックスの重量感、そしてレオとサミュエルの堂々たる悪役ぶりが活きる結末のカタルシスといったら! 前述したように、普段は寝ている時間なので、ちょっとでも退屈だとそのまま眠ってしまうかも、と危惧していたのに、そんな兆候を感じることなく、むしろ劇場を出たときにはテンションが最高潮になっていたくらい。これは本当に素晴らしかった。

 3本すべて十二分に面白かったですし、お陰で眠気を感じることなく8時間乗り切ることが出来ましたが、さすがに家に着いた頃にはちょっとグロッキーになっていた。移動中にちょこちょこ書き進め、8割方仕上がっていた『ヒッチコック』の感想を完成させてアップしたら、もう早めに休もう――と思っていたのに、こういうときに限って、自宅のネット回線が繋がらなくなっている。

 どうも外に引いている線が完全に切れているようで、回復の兆しはまったく見られない。仕方なく、iPhoneテザリング機能で乗り切ろう、と思ったのに、どうやら接続設定が複数混在するとシステムが混乱するようで、なかなかインターネットに繋げず、悪戦苦闘しているうちに日付が変わってしまいました……。

 母の話では、昼間にも自宅の無線LANが繋がらなくなっていたそうなので、恐らく暴風の影響で外の回線がおかしくなったのでしょう。接続会社に問い合わせはしておきましたが、今夜中に自然に解決する、なんてことはなさそうです……明日のうちに解消してくれるといいなあ……。

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