歌声と前歯と言葉と夏花火。

 作業もあるんですけど、明日にちょっと大きな展開を控えているため、モラトリアム感のある1日でした。
 午前中、なんとなく明日以降の生活スタイルを模索しつつ過ごし、昼食のあとに仮眠を取ると、自転車にて上野へ。そーいうときでもやっぱり映画は観る……どのみち観ないと、気になる作品はどんどん積み重なってくし。
 TOHOシネマズ上野にて鑑賞した今日の1本は、『クジラの子らは砂上に歌う』のイシグロキョウヘイ監督初のオリジナル長篇映画、俳句に熱中する少年と、前歯を気にしてマスクが外せない少女のひと夏の交流を描いた青春映画サイダーのように言葉が湧き上がる』(松竹配給)
 ……当初の予定では去年の夏頃公開でした。しかし、現状でもやっぱり、“マスクを外せない”という設定の効果が薄れてしまったのは否めない。個人的にはそういうところは無視できるんですが、売る上ではちょっと機を逸してしまったかも。
 でもアニメーションによる青春ドラマとしては大変に優秀。描線のくっきりした、わたせせいぞうのイラストにも通じるヴィヴィッドな背景や色遣いにアニメーションとしての個性を際立たせながら、人物造型にちらちらと毒を盛り込んで適度なリアリティを織り込み、特徴的だけど親しみやすい世界を作っている。
 そして意外と心を掴まれたのが、俳句の生命感。どうも、この印象的なタイトル含め、劇中の句はほとんど当時現役だった高校生が、製作の過程で行われた句会で詠んだものらしい。それが、落書きとしてしばしば背景に紛れ込んでいるのが、思いのほか作品にリズムと、より深い情感を持たせている。
 すごくざっくりと捉えてしまえば凡庸な物語、けれどそれを小道具と巧みな切り取り方で活き活きと魅せた秀作でした。結末の、清々しいほどの爽やかさもいい。前述の通り、タイトルも高校生の句を引用しているのですが、劇中、より重要なキーワードを差し置いてこれを選んだのも理解できる。ほんとうにピッタリだ。

コメント

  1. […] 原作:フライングドッグ / 監督&演出:イシグロキョウヘイ / 脚本:佐藤大、イシグロキョウヘイ /  […]

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